政府発行紙幣は、ありだと思う
昨日の朝日新聞の天声人語に、円天の詐欺事件と絡めて、政府発行紙幣について「何でもありの集票対策」と書いてあった。恐らく、筆者は直感的にそう思ったのを、あまり深く考えずに詐欺事件と同列に読み物(コラム)にしたのだろう。そう言う私も実は、最初に聞いた時には、胡散臭く思った。

ところが、よく考えてみると、胡散臭い人々が短絡的にそう言っていると胡散臭く聞こえるだけで、実際には的を得た考え方だと思うようになった。調べてみると、ノーベル経済学者のスティグリッツ氏が、「日本は政府紙幣を発行すべき」と2003年に発言していた。面白そうな著書もあるので、この人の本は週末にでも読もうと思う。

さて、なぜ政府発行紙幣が妥当な考えと思えるのか、私なりに簡単に説明してみようと思う。まず、日本経済の現状についてだ。

現状を景気後退と一言に言うが、それは医者をして「熱がある」と言うのに等しい。何も言い当てはいない。処方箋が書けなくて当然だ。ボタンの掛け違いは24 年前に遡る。1985年、ニューヨークのプラザホテルで、アメリカの貿易赤字の処方箋として、G5がドル安政策に合意した。いわゆるプラザ合意である。週末235円だったドルは週明けに20円暴落し、翌年私が為替ディーラーとして歩み出した時には、すでに160円台で取引されていた。その後の円高の流れは周知の事実だ。

ボタンの掛け違えというのは、この後の日本の対応だ。貿易不均衡の是正のために、当時は内需拡大という言葉だけはよく聞いたが、輸出頼みの経済構造は変化しなかった。輸出企業は血の滲むような努力をし、日銀は膨大な円売り介入を続けた。結果、何が残ったか?

輸出頼みを変えずに頑張り過ぎた日本人は、国内生産の無駄を極限まで削り、海外の生産拠点を増やした。つまり、円高でも海外に売れる製品にするために、国内の労働者を犠牲にした。一方、日銀のなりふり構わぬ介入の結果、膨大な外貨準備高と、一時的な円安に乗った民間の外債投資、合わせて150兆円とも言われる外貨資産が残った。昨年秋からの円高で、その資産は大幅に目減りしている。これ以上の円高は日本の死活問題になる。20年間、マーケットトレンドに逆らい続けた結果だ。

悲劇はそれだけではない。2002年から2007年まで、戦後最長と言われた景気拡大。これを実感できた人はどのぐらいいるだろう?その間、企業はせっせと手元資金を積み上げ、それが一段落すると今度は株主に利益を配分し、労働分配率はこの20年で最低レベルだ。つまり、上がった利益は資本家が吸い上げ、働いた人の手には残っていないということだ。

その資本家は今、投資先が見つけられないでいる。畑(実態経済)から吸い上げ過ぎて、畑が壊滅状態だからだ。したがって、従来通りのやり方は通用しない。日銀がいくら通貨供給量を増やしても、それは銀行経由というルートを取る以上、安易な融資ができるわけでもなく、結局限られた人のところにしか届かないからだ。もはや日銀に任せておける局面ではない。

だから財政出動というのは恐らく正しい。問題は財源と使い方だ。使い方は、従来通りの公共事業ではなく、今後の日本の新しい産業を生み出すための投資に使われるのが望ましい。即効性という意味では、給付金という考え方もある。ただし、3年後の増税つきでわずか1万2000円というのでは話にならない。そこで、政府発行紙幣という考え方が妥当性を帯びて来る。これだと政府は印刷代だけで、財政を悪化させずに流動性を供給することができる。現状を考えれば、理にかなっていると言えるかもしれない。

これに反対する人の論拠は、通貨価値を下げ、インフレを誘発する危険性だ。確かにインフレに対する警戒は必要だ。ただ、十分に警戒しつつ進めれば、コントロールできるのではないかと思う。これだけの生産能力を持ち、潜在的に非常に強い通貨を持つ国がハイパーインフレになるとは思えないのだ。引き締め幅はまだ存分にあり、むしろ加熱し始めて金利が上がれば、海外からの資本が流入する。通貨は安くなるどころか、さらに円高が進むかもしれない。輸出頼みが変わっていなければ、自動的に冷え込むだろう。逆に円安に振れようものなら、輸出が好調になる。極端に円安になれば150兆円の外貨で円買いもできるが、それ以前に世界中の資本家が円を放っておくわけがない。恐らく日本が世界経済を牽引する。

では具体的にどうするか?

政府発行紙幣の目的は、ボタンの掛け違いから放置した宿題を片付けることだ。すなわち内需拡大。そのためにどうするかは、少し深く考えてみる必要はあるだろう。言うまでもなく有効に使わなければ。考えがまとまったらいずれ書こうと思う。また、発行規模についても、マネーサプライ全体の脈絡の中で熟慮する必要がある。ただ、既存の過剰流動性議論の中では答えは出ないと思う。少し難しくなるが、日本のマーシャルのK(流動性がGDPの何倍あるかの指標)が何故日本だけ突出して高いのか、という経済、社会構造への洞察なしには語れない。これもまた少し考えてから書こうと思う。
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by martano | 2009-02-07 17:02 | 社長のひとりごと
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