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政府発行紙幣を頭から否定してはいけない
前回までのブログで度々書いた政府発行紙幣。これは本来日銀のみが発行すべき通貨を、政府が発行し、市中に流通させることを言います。混乱を避けるため、必ずしも二種類の通貨を流通させる必要はなく、それを全額日銀が買い取り、売った金額を国庫に入れ、政府がそれを使うことにより、市中には日銀券で流通させることも可能です。ちなみに政府による通貨の発行は、法律にも定められているれっきとした政府権限です。しかし、この政府発行紙幣を頭から否定する人は少なくありません。曰く、通貨の信任が低下する、ハイパーインフレになる、太政官札の二の舞になる、などなど。

でもちょっと考えてみてください。果たしてそうでしょうか?

通貨の信任が低下する?十分な裏付けもなく通貨を発行することになるから、ですか?それとも発行量の問題でしょうか?そもそも通貨の裏付けって何でしょうね。もはや金などの現物でないことは明らかです。日銀の資産を見ても、金などはほんのわずか、国債が半分以上を占めていたりまします。結局は人の労働、つまり日本人の生産性に対する信頼が裏付けということではないでしょうか?だから、日銀は2001年から2006年まで、信用を増やすことにより、量的緩和をしたんですよね?別に実物の裏付けがあったわけではない。それで通貨の信任は低下しましたか?それと政府発行紙幣が本質的に何が違うのでしょう?日銀のエゴだけではないでしょうか?

ハイパーインフレはどうでしょう?日本がハイパーインフレになるんでしょうか?ハイパーインフレになる条件は?貨幣の過発行ですか?違います。貨幣を発行しても、それを増やす実体経済、資産市場がなければ価格は動きません。つまり、お金の時間的価値が増さないとインフレにはならないのです。お金の時間的価値とは、今日のお金が明日のお金よりも価値があるということです。それが成立するには、旺盛な消費意欲によって右肩上がりの市場が背景になければならない。さらに右肩上がりの市場は需要に供給が追いつかないことが前提なのに、その供給は今や世界中から提供されます。しかも日本は世界でも有数の経常黒字国で、外貨も稼ぎ、通貨も強い。世界中からモノは買い放題です。そんな国が貨幣の発行量を増やしただけでハイパーインフレになるんでしょうか?

最後に太政官札の例を引き合いに出す人たちに至っては、ただ否定したいだけなんだとしか思えません。明治政府に対する信用と、今の日本政府に対する信用が比べ物になりますか?今の日本政府がそんなに信用ないなら、何故巨額の財政赤字を抱えてなお、国債のほとんどを日本人は買うんです?もちろんいつまでも財政赤字垂れ流しでは、そのうちに国債の消化に支障をきたす日が来るかも知れない。むしろ、だからこそ、政府発行紙幣なんですよ。政府の財政収支を悪化させることがありませんから。

どうも政府発行紙幣を否定している人たちは、そんなウマい話があるわけがない、と思っている節があります。別にウマい話ではないんですよ。むしろ、長期にわたり、様々な犠牲を払って頑張って来た国民が受け取るべき当然の対価だと私は考えています。

説明しましょう。

日本の経常黒字の累計額って、いくらぐらいだと思いますか?財務省統計によると、日本の貿易黒字が問題になり始めた80年代から現在までの累計で、約350兆円です。経常収支は簡単に言うと、日本人全体が海外に払ったお金と、海外から受け取ったお金の差額ですから、それだけ日本人が頑張って稼いだということです。プラザ合意以降の円高をモノともせず、驚異的な頑張りです。では、そうして稼いだ350兆円はではどこへ行ったのでしょう?国際収支統計というは、経常収支+資本収支+外貨準備増減=ゼロになりますから、経常収支が黒字なら、その分資本流出(海外投資)と外貨準備に回ります。この資本収支と外貨準備を合わせた対外資産の累計は2009年末で266兆円。つまり稼いだ350兆円のうち266兆円は対外資産(外貨準備高96兆円を含む)になっています。これはほとんど全て、皆さんの預金や年金が回り回ってそうなっているわけです。では350兆−266兆の残りの84兆はどこにあるのか?

良い質問ですが、様々な要素があるため、簡単に答えられる質問ではありません。でもかなりの確度で、私は消えてしまったと考えています。つまり、対外資産運用が元本損失を出しているということです。外貨建て資産については毎年の統計算出時に円換算しますから、為替差損も含み、84兆円もの損失ということです。もちろん、対外資産は金利などの利益も生み、それは経常収支の中に入ってきますから、個々の投資自体が損か得かというところまではわかりませんが、いずれにしても、我々の稼いだ350兆円が大幅に目減りしているのは確かです。

これがどれだけ悲劇的かというと、つまりこういうことです。日本人が円高という逆風に対し、頑張り過ぎて膨大な経常収支を稼いだ結果、それらは国内に還流せずに対外投資に回り、自分たちが使う前に大幅に目減りしているということ。それは、無能な銀行、資本家、機関投資家や政府が我々の預金を使って勝手に行ったことであって、政府は国民の代表で我々に責任があるとしても、その他については全くコントロール不能であること。更に言えば、この構造のまま我々がいくら頑張っても、事態はさらに悪化するだけであるということ。

ではどうすればいいのか?人々が預金を引き出し、使えばいいんです。もっと経済学っぽい言い方をすれば、内需拡大で国内消費を増やし、経常収支をバランスさせる方向へ舵を切るしかありません。そうすれば円高プレッシャーも和らぎ、国内にお金が還流するようになる。実はそんなことは24年前のあの有名な前川レポートに書いてあります。一部引用すると『我が国の大幅な経常収支不均衡の継続は、我が国の経済運営においても、また、世界経済の調和ある発展という観点からも、危機的状況である』だから内需主導の成長を目指すと。

ところが、実際には内需拡大は置き去りにされ、経常黒字はますます増えた結果、自らの首を絞めています。実は、内需拡大とは、口で言うほど簡単なものではないのです。かけ声一つで動くものではなく、そこには日本人の消費性向、貯蓄志向という見えない障壁があります。特に今の不安な時代、なかなか貯金を下ろして使えというのは難しいですし、その貯金すらない人たちも大勢います。この中で消費を増やすには、預金口座の残高を直接増やしてあげるしかないのです。だから政府発行紙幣です。発行額は350兆円。まさに我々日本人が汗水たらして働き、稼いだまま使えない状態にある金額と同額です。そして、そのうち300兆を直接国民に支給します。年間100兆円(一人当たり約80万円)を3年間支給するのです。日本人のことですから、全部は当然使わないでしょう。でも平均して2割が使われたとすると、それだけでGDPを4%押し上げます。残りの50兆を使って、政府は環境対応型の社会資本整備、内需関連産業への雇用の移転に着手します。方向性を示すのです。そうすれば、活力を取り戻した民間が改革を進めるでしょう。

こんなことを書くと、すぐにバラマキと批判する人がいますが、私に言わせれば無意味なレッテルです。バラまくというだけで考慮に値しない、というのは単なる思考停止です。それが必要な時があっても全く不思議ではない。今がまさにその時だと思っています。しかも、350兆という金額は、もともと我々が稼いだ外貨で、そのうち266兆は対外資産として保有しています。つまり、それが担保となるわけです。何も持たない国がこんなことをやれば通貨が崩壊するでしょうが、日本はいざとなったら資産を全て売り払い、円買いに回すこともできるのです。正に日本にしかできない、日本がやるべき政策ではないかと思います。

ただし、この政策をやるには一つ重要な注意点があります。それは、資産バブルは二度と起こしてはならないということ。そのための政策、または規制が必須です。この話をすると、いよいよ土地の問題に切り込むことになりますが、それはまた別の機会に書きます。
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by martano | 2010-09-14 17:36 | 社長のひとりごと


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