2006年 04月 29日 ( 1 )
マクダーナルズ
昨日のニュースで、気になったものが2つあります。一つは「日本マクドナルド、32種類の商品を値上げ」というものと、もう一つは「日銀、ゼロ金利解除方針を明示」というものです。ゼロ金利解除については後で書きます。まずはマクドナルド値上げから。

私思うに、マクドナルドほど商品の値段を頻繁に変えるチェーンも珍しいんじゃないかと思います。私なんかは何が変わったのかわからないうちに、次の価格になってたりします。ま、滅多に行かないから当然か。

さて、このマクドナルドの価格戦略(というか、価格を頻繁に変える戦法)はいつから始まったのでしょう?私の記憶が正しければ、ちょうど円高が進んでいる時です。うろ覚えだといけないので少し調べてみましたが、390円の「サンキューセット」が1987年、ちょうど85年のプラザ合意後に円高が加速を始めた頃です。そして決定的な低価格路線が1995年に210円のハンバーガーを130円に値下げした時、ちょうど円高がピークの79円台をつけた年です。

私はちょうどその頃、為替ディーラー、しかもドル/円担当だったこともあってその頃の状況を鮮明に覚えているのですが、円高による輸入原材料価格の低減や、バブル後のデフレ傾向などを一早く捉えた価格戦略に非常に驚いたものです。当時、我々市場関係者の中でもそれらの傾向には異論がある中、誰よりも早くそれを読み切った当時の藤田田(でん)社長に、「この爺さん、実務家なのに相場師としても凄ぇ」、と舌を巻いたものです。でも、今から思えば、そういう相場観をスピーディーに価格戦略に組み込んだ剛腕ぶりが「実務家として凄い」んですけどね。ま、駆け出しの相場師で、同じ目線でしか見られなかった私が若造でした。

しかし、その藤田氏も間違えたことがあります。95年に最高値をつけた円は、その後、日銀の介入で急速を値を戻し、あっという間に140円台まで戻ってしまったのです。しかしその中でマクドナルドのハンバーガーは80円から65円まで下がりました。恐らく、円高の局面ですでにかなりの為替予約を仕込んだのと、戻しは一時的との相場観だったと思います。結局そのまま約十年続いた円高サイクルは終わりを告げるのですが、それを読み切れなかったとしても、藤田氏の相場観が悪かったとは決して言えません。プロでも頭の切り替えは難しかったです。

結局藤田氏は経営責任を取って辞めることになりました。相場師だったらさっさと損切りして次の勝負に出られるのですが、組織的に大きく舵を切ると簡単には戻せないのが実業の世界です。結果的にマクドナルドはそこから大きく迷走を始めたというのが私の見方ですが、実際のところは内部の人にしかわからないかもしれません。

でも少なくとも外から見る限り、そこから頻繁に行われている価格変更は戦略(ストラテジー)ではなく、戦術(タクティクス)になっている気がします。それが返って戦略を傷つけているように思えるのです。

私が言う戦略とは、大きな流れの中で戦うための理念、勝利までの道筋を示すものを指します。具体的に飲食店で言うと、どんなお客様に、どんなものをを提供し、どう競争に勝っていくのか、という背骨の部分ですね。戦術とは、戦略を具現化するための具体策です。

戦略の中で最も重要なのは価格戦略です。それが自然にターゲット層を決定し、商品、サービスの質を決めます。価格戦略がなければ、店構えから内装、メニュー、食材、ユニフォームに至るまで何も決まりません。逆に、一旦決めた戦略は簡単に変えられません。大衆店から高級店へのシフトなどはお金がかかるからです。

本来価格の変更というのは戦略的に決めるものだと思いますが、マクドナルドの場合、あくまでもハンバーガーチェーンという枠の中で考えれば、もともと高級志向v.s.大衆路線というほどの幅もなく、戦術の範囲内かもしれません。しかし、それも戦略あっての戦術であって、価格変更があまりに頻繁だったり、変更の理由が業績悪化というのであれば、どんな戦略に基づいているのかわからなくなります。

皆さんも御存知の通り、マクドナルドはスタッフやサービスの質、商品の品質など素晴らしいものがたくさんあるので、それらを適正な価格で提供して満足していただく、というシンプルな戦略でいいと私は思うのですが、いつからか「より安く」という戦術が常態化し、それが業績を悪化させています。

経済用語に価格弾力性という言葉があります。価格の変動によって需要が変化しやすい商品は弾力的、変化しにくい商品は非弾力的ということです。前者は例えば高級嗜好品など、後者は米、塩などの生活必需品などです。ただ、それは経済の教科書のお話。マーケティング的に言うと、いかに価格弾力性を低めて、利幅を確保するかが重要になります。つまり、高くても買っていただける商品、サービスを提供することにより、利益を確保したいのです。

ですから値下げというのは危険な戦術です。利幅を減らしても、売り上げを伸ばすという意図ですが、それはいつまでも続かないからです。気がついた時には、値下げをしても大して売り上げが伸びなくなり、まるで伸び切ったゴムのように価格弾力性を失います。そうなると後戻りもキツいですね。値下げによって得た顧客は、値上げによって簡単に失うかも知れません。

結局のところ、シンプルに自分達が良いと思う物を適正な値段で販売し、それを評価してくれるお客様に来ていただく、ということにつきると思うのですがね。規模が大きくなると、そんなんじゃ甘いんですかね?

いずれにしても、マクドナルド、今後も注目です。いい教材だもの。
[PR]
by martano | 2006-04-29 21:31 | 社長のひとりごと


S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
関連リンク
カテゴリ
全体
マルターノ新着情報
社長のひとりごと
あざみ野南「エリアA]
トリビアル・マルターノ
マルターノストーリー
今週のランチメニュー
ライブ告知
未分類
以前の記事
2011年 05月
2011年 03月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
最新のトラックバック
パタゴニア
from ShopMasterのひとりごと
Funky
from ちゃりな話を
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧