この円高局面でなすべきこと
まず、この円高について、最近になって通貨安競争という言われ方がなされるようになった。私はこの言い方は正しくないと思っている。通貨安を容認する各国の態度と、通貨安になった直接の原因は別のものだ。あたかも各国が自国の輸出を好転させるために、通貨安を仕掛けているという論調は違うと思う。為替はそんな当局の思い通りには動かない。彼らは結果的に、自国の輸出のために通貨安を容認するという危険な橋を渡っているに過ぎない。

何故それが危険な橋なのか、また、それではこの通貨の動きの原因は何か?

私はそれを解く鍵はズバリ、各国の経常収支だと考えている。ここで経常収支について簡単に説明しよう。経常収支は基本的にその国の収支計算書のようなものだ。輸出などで入って来るキャッシュフローと、輸入などで出て行くキャッシュフローを相殺して、黒字か赤字か。黒字ならそのお金は投資、貯蓄に回り、赤字ならその分をどこかから借りて来なければならない。家計で考えてみればわかりやすい。誰かが貸してくれる間はお金は回るが、貸してくれなくなったら破綻する。国家も同じ。要はアイスランドやギリシャで起こったことと同じことが世界規模で始まったのだ。

ここで間違えてはいけないのは、この破綻は財政赤字によるものではないということだ。日本の財政はヒドいものだが、それでも経常収支が黒字で、財政赤字を国内の貯蓄で賄っている間は絶対に破綻しない。だから、ギリシャを見て、いきなり消費税論議に入るのは慌て過ぎだ。鍵となるのは経常収支、財政収支ではない。それは後からゆっくりやればいい。

そう考えると、ドルが売られるのは当然だ。ブッチぎりで世界最大の経常赤字国。消費が落ち込んで金利を下げざるを得ず、金利が低ければドルを買う理由もほとんどなくなる。通貨が下がれば投資意欲は更に落ち込むから、危険な橋というのはそういうわけだ。反対に世界最大の経常黒字国である中国の人民元には膨大な金額が流れ込んでいると思われるが、管理相場で数字には表れない。その代わり、スイスや日本のような安定した経常黒字国の通貨は買われる。

ではどうしたらいいか?

恐らく、この流れには誰も逆らえない。為替介入は全くのムダどころか、日本国民の財産を危うくする。すでに100兆円もつぎ込んだ外貨準備をさらに増やして介入するのは、火山口にガリガリ君を放り込むようなものだ。むしろ米国債を売って、外貨準備高を減らした方が傷は浅い。それができなければ、為替相場では何もしないことだ。その代わりにやれることがある。それが実はこのブログ記事の骨子だ。

実は、この経常収支と為替の関係を明らかにしようとする分析方法はアブソープション分析という古典的なもので、我々が現役の頃、このアプローチでトレードするディーラーなど一人もいなかった。どちらかと言うと、ファンダメンタルズを追うアナリストが行うようなものだが、ここにきてその分析法が効いて来ているように見えるのは、変動相場の通貨システムそのものが、その歪みを一気に吐き出そうとしているからではないか。

さて、そのアブソープション分析の元となるのが以下の数式である。

経常収支=国民総生産ー(国内消費+国内投資)

これを見れば一目瞭然だ。日本の経常黒字の根本は、国民総生産に対して、国内消費(内需)と国内投資が足りないことによる。要は国内にお金が回っていないのである。生産力が十分あるのにも関わらずだ。これに対する処方箋は、もはや大規模な財政出動以外にはあり得ない。財源がないって?そう、だから敢えて主張する。政府発行紙幣を発行し、国民一人一人にバラまけ。金額は年間100兆円を3〜5年分(物価指数を注視しながら)。その上で、日本全国を持続可能な環境対応型の社会に作り変える。化石燃料から世界に先駆けて脱却し、その技術を世界に向けて売る。ハイパーインフレなどそう簡単には起きない。それは生産性が低く、通貨が安い国で起きることだ。むしろこれでインフレになるようなら、今までの金融緩和政策が根本的に間違っていたという証拠だ。円安に振れる心配もない。なっても望むところだ。日本が加熱すれば、放って置いても海外から投資が来る。むしろ円高になる可能性が高いが、その頃には、アメリカに貸しっぱなしの100兆円などくれてやればいい。逆にこのままだと、国民の貯蓄であるその100兆円は無策のまま露と消える。だから、年間100兆円規模の政府発行紙幣はむしろ必要だ。ただ、政府発行紙幣と言うと、それだけで抵抗感を示す人がいるからそこの説明は慎重を要する。今回は長くなってしまったので、もっと詳しい説明については次回以降に譲るが、ただ一つだけ言えるのは、今は全く新しい大胆な発想が必要で、古い常識や思い込みに囚われている場合ではないということだ。
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by martano | 2010-08-24 02:19 | 社長のひとりごと
<< 金融政策の失敗が示す日本経済再生の道 この円高は止まらない >>


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