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参議院選、選べなくて困る
 今度の参議院選、選べなくて困っている。
 どの政治家の言うことを聞いても、この2年で世界的に起きている大きな流れを理解しているとは思えないのだ。この2年で世界は大きく変わった。それは、中国やロシアによる国家資本主義の推進と共に、共産主義v.s.資本主義という古いイデオロギー対立が終焉し、資本主義が勝利したかに見えたそれまでの流れに対し、資本が利己的に利益を求め世界中を徘徊する市場原理のみに基づいた資本主義にも実は限界があることを露呈した。今や大きなパラダイムシフトの時代なのだ。

 わかりやすく説明しよう。市場原理に基づく資本主義とは、市場による適者生存のメカニズムに基づき、良質な資本だけが生き残るシステムだ。これはある時期までは機能していた。ある時期というのは、資本(お金)が実体経済の中でしか還流せず、経済自体もローカルだった時期のことだ。その頃、資本家は国内に直接投資し、国内の労働者を雇っていた。労働者を搾取するだけの資本は労働者を確保できず長期的には生き残れないため、適度な労使バランスも保たれていた。しかし、それは古き良き時代のことだ。現代は違う。資本は自由に世界中を行き来でき、最も投資効率の良い案件を選べる。投資は株式市場を通じて行われ、短期的に株価を上げる経営陣が雇われる。コストをカットし、最大利益を上げる経営者が良い経営者だ。グローバル化した経済では、最も労働力の安い国でモノは作られる。世界中の労働者は、世界で最も賃金の安い国からの賃下げプレッシャーを常に受けるのだ。それが現代のデフレの正体だ。もはや金融政策とは何ら関係のない、世界経済の構造の問題であるから、この10年で日銀が行った金融緩和で解決されないのは当たり前の話だ。

 この結末は明らかだ。世界中が二極化するのだ。特殊技能のない全ての労働者は常に世界の最低賃金の国の労働者と競争させられ、生活ギリギリのところを永遠に彷徨う一方、資本家や経営者、特殊技能を持つ者達はその何百倍、何千倍、時には何万倍もの報酬を手にする。なら頑張ればいいではないか、と自由主義者は言うが、最大多数の最大幸福とは程遠いこのシステムが、文明の発達した我々の作り上げた最適な制度というのではあまりにお粗末だ。私は恥ずかしいとさえ思う。何故なら、恐らくこれは我々全員の欲望の末路だからだ。

 実は私も数年前まで、市場原理型の資本主義を信じていた。政府の関与など最小限に抑える小さな政府こそが正しいと。しかし、その見方を180度変えたのが2年前のリーマンショックだ。あれにより、今何が起きているのかを悟った。金融資本家達は手っ取り早く利益を得るために、最も効率的な投資、または投機しかしない。その舞台は主に金融市場だ。リーマンショック以前に起きていたことを思い出して欲しい。原油、穀物、貴金属の相場はいずれも投機で高騰し、リーマンショックと共に暴落した。彼らは現物が欲しかったのでも何でもなく、高値で売り抜けるために先物を買っただけだ。その結果、我々の生活に大きな影響が及んだのを覚えているだろう。彼らはお金を増やすためだけに投機的に市場を利用して悪びれることはない。リーマンショックの直接のきっかけになったサブプライムローンも全く同じ脈絡の中で語られる。詳しく説明すると難しくなるのでここでは避けるが、要は金融工学を駆使して新しいタイプの金融商品を作り、リスクを覆い隠して詐欺にも近い賭博市場で大儲けしていたに過ぎない。しかし行き過ぎた信用創出からバブルが生まれ、それが弾けて金融危機に至った。そのメカニズムの説明はまた別の機会に行うが、どれだけおかしな状況だったか。

 2007年の世界金融資産は167兆ドル(マッキンゼー調べ)。これは世界GDPの3.5倍だ。1980年当時は1倍、1990年当時には2倍だったものが3.5倍。通常の経済活動に投資しただけではこんなことはあり得ない。お金が実体経済を動かすために還流するのではなく、その桁数を増やすためだけに実体経済を素通りして金融市場に流れ込み、過剰な信用創出によりバブルを生み出したことを示している。過剰なと私は書いたが、その手口は詐欺に近いもので、その時限爆弾はまだそこかしこに埋まったままだ。想像してみて欲しい。世界GDPの3.5倍、つまり、世界中の人々の一年の全経済活動を3.5回買えるだけの富が世界中に散らばっていて、機会と見れば瞬時に世界中を駆け巡るのだ。ほんの一部が動くだけで、一国の経済などひとたまりもない。ギリシャで起きたことなど序の口だ。このまま自由な市場に任せておけば、世界経済は自滅する。それを示したのがリーマンショックなのだ。今こそお金に関する考え方、修正資本主義の在り方、最大多数の最大幸福について根本的に考え直す必要がある。そのために、日本は非常に重要な役割を果たしうるのだが、その国の議員候補者がこの大きな潮流を理解していると思えないから困っているのだ。

 日本は実は、まだ比較的良い状況にある。財政状態が最悪だと言う人もいるが、日本の国債の93%は日本人が買っている。金利も低く、通貨も安定的に推移し、経常収支は恒常的に黒字だ。その国だからこそ大胆に打てる手がある。それを政策として語って欲しいのに、どの候補者もまるでわかっていない、というのが私の正直な感想だ。ここまで言うからには、自分の考えもはっきりさせないといけないだろう。ただ、今回は長くなったのでそれは次回に。
by martano | 2010-06-30 20:58 | 社長のひとりごと
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